[知楽市の履歴書](7)子ども安心・安全プロジェクトのはじまり

[知楽市の履歴書]:2003年に設立した知楽市の20年を振り返ります。

子ども安心・安全プロジェクトのはじまり

初代専務理事 高本 芳昭

1999年に携帯電話がインターネットサービス(NTTドコモ、ⅰモードなど)を開始してから既に5年が経過して、私たちの日常生活やビジネスにおいて、携帯電話は非常に便利なコミュニケーションツールとして普及し、子どもたちの所有率も急速に高まりつつあった。しかし、その一方で迷惑メール、個人情報の漏洩、架空請求詐欺などの深刻なネットトラブルや犯罪が多発していた。

私たちは、子どもたちにインターネットの正しい使い方を啓発し、ネットの脅威から守る活動を始めることにした。

■子どもインターネット安心・安全教室

2005年、某IT企業の紹介で、文部科学省が展開していた「こどもの居場所づくり」事業「メディアフォーラム」に取り組んだのが、最初の活動である。

金沢市、白山市、加賀市、野々市町、津幡町で8教室を開催し、小学生とその父兄236名が受講した。教室は小学校のパソコン教室や学習センターを利用し、パソコンやインターネット環境は各施設の器材を活用。教材はIT企業から提供されたものを知楽市でアレンジして使用した。

受講者は小学3年生から6年生で、親子での参加も可能な形とし、隔週土曜日に以下のような8回コースで開催した。

ーカリキュラムの一例ー
  1. オリエンテーションと参加者の自己紹介
  2. ゲームで遊びながらマウスやキーボードに慣れる
  3. インターネットやメールの正しい使い方
  4. チャットやネットゲームの正しい使い方
  5. ケータイメールの正しい使い方
  6. ネチケットを学ぶ
  7. 我が家のルールを作ろう
  8. 感想文


毎回、後半にはインターネットを使った遊びを取り入れ、修了時には知楽市発行の「修了証」を授与した。

■e-ネットキャラバンとインターネット人権講座

2006年3月、総務省が全国で展開していた「e-ネットキャラバン」の講師認定講習を受講し、知楽市の10名が講師として認定された。その後、北陸総合通信局から、県内を中心に北陸3県で行われる講座への講師派遣の依頼があった。受講者は小学校の教員や父兄で、各講座20名から数十名、イベントでは100名を超えることもあった。

e-ネットキャラバンとしての講師派遣は6年間で46講座、受講者は2200名に達した。また、石川県や金沢市、野々市町の教育委員会等からの依頼で、「インターネットと人権」などの講座にも15回以上講師を派遣した。

ーカリキュラムの一例ー
  • インターネットで広がる世界
  • ネット社会で何が起きているか
    危ない、情報が狙われている 子どもを狙う危険な落とし穴
  • ネット利用に必要な3つの力
    責任力、判断力、自制力
  • ネット社会の7つの常識
    自己責任、思いやりと謙虚さ、個人情報、危険なサイト
    著作権、ウイルス、パスワード管理
  • 携帯インターネットの利点・欠点
  • 親と子どもの認識のズレ
  • 我が家のルールを作ろう


所要時間は質問応答を含め90分程度であった。

■パソコン分解講座

石川県立児童館や金沢市玉川子ども図書館と連携して、パソコン分解講座「パソコンを分解しよう!」を開催した。

パソコン分解講座「パソコンを分解しよう!」

コンピュータの中身はどうなっているのだろう?

この「パソコンを分解しよう!」では、自らネジを回してパソコンを分解し、パソコンの構造や仕組みを学びます。
たくさんの部品がぎっしり詰まっていて、ひとつひとつの部品に役割があり、それらが組み合わされて計算や文書作成、お絵描きなどができる、便利なパソコンの不思議を解き明かします。

ーカリキュラムー

1部 パソコン分解講座

パソコンの分解を通じて、構造や部品の役割を学び、さらにエコ分別を行うことで、地球環境保護の大切さを学びます。

2部 インターネット安心講座

子どものインターネット利用が進む中で、ネットを利用した“いじめ”やネット犯罪の被害が急増しています。講座では「チョット待って、ケイタイ」DVD映像を見ながらネット利用の安心・安全を学びます。


参加者は2講座で合計35名であった。

■振り返って

2005年当時、子どもたちの携帯電話普及率は、小学生30%、中学生60%、高校生は80%であった。石川県は県条例(いしかわこども総合条例 第33条2)で「原則、小中学生には携帯電話を持たせない」と定め、学校でもこの方針に基づいた指導を行っていた。家庭では、子どもが「みんな持っているから、僕も欲しい」と言っても、確固とした方針がない場合が多く、インターネット利用に関する家庭内ルールも整っていない状況だったので、私たちの取り組みは時宜を得たものであったと考えている。

思えば、定年を過ぎたシニアだからこそ、何のしがらみもない私たちだからこそ出来た啓発活動であり、その地道な活動が、2008年「電波の日」に北陸総合通信局長賞、2015年には内閣総理大臣表彰(石川県警察本部推薦)として評価されたことを、誇りに思っている。

(8)へ続く

 


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