[知楽市の履歴書](8)シニア(高齢者支援)プロジェクトの始まり

[知楽市の履歴書]:2003年に設立した知楽市の20年を振り返ります。

シニア(高齢者支援)プロジェクトの始まり

初代専務理事 高本 芳昭

ケーネット知楽市の設立目的のひとつは、石川県情報システム工業会(ISA)会員企業の定年退職者が社会貢献活動に参加できる受け皿を提供することであった。設立発起人にISAの若手メンバーが含まれていたのもそのためである。それから20年間、企業等を定年退職したシニア世代や高齢者を支援するさまざまな活動を幅広く展開してきた。

■アイディアミーティングの開催(2003年~現在)

設立当初から現在まで途切れることなく開催しているアイデアミーティング(例会)は、誰でも自由に参加し発言できる場である。その中からシニアたちの豊富な経験や知恵の交歓により多くのアイディアが生まれ、プロジェクト活動へと発展し、シニアたちは数多くの社会貢献の実績を残して来た。

詳しくは「知楽市の履歴書(2)」を参照されたい。

■団塊世代フォーラムの開催(2006年)

団塊世代の大量退職時代を迎え、「時代が求める経験力、これからがあなたの出番だ」をテーマに、定年後を考えるフォーラムを開催した。

  • 基調講演:「定年後だから出来るNPO活動」というタイトルで、ノンフィクション作家・加藤仁氏に講演を依頼した。加藤氏は、定年退職後の生き方をテーマに長年取材を重ねてきた経験をもとに、パソコンを活用して充実した日々を送るシニアの事例を紹介した。
  • パネルディスカッション:「2007年問題に取り組む課題と、団塊世代が果たす役割」をテーマに地域を代表する4名のパネラーによる活発なディスカッションが行われた。
    • 金沢工業大学ライブラリーセンター館長 竺 覚暁氏
    • 石川県情報システム工業会会長 細野昭雄氏
    • 石川県産業創出支援機構副理事長 斎藤 直氏
    • 地域ボランティアをする主婦 福田博子氏
  • 活動事例紹介:企業OB人材マッチング石川協議会とケーネット知楽市がそれぞれの活動を紹介した。
  • 交流会:100名を超える参加者による交流会を実施した。
  • 主催:ケーネット知楽市
  • 共催:石川県情報システム工業会、石川県産業創出支援機構、企業OB人材マッチング石川協議会、情報通信月間協議会

■いしかわ介護情報ナビ「ほっとあんしん介護」の構築(2010年)

石川県の委託を受け、介護初心者や介護に不安を抱く家族、地域で活動する高齢者見守り隊などの地域サポーターを対象にした介護ポータルサイトを構築した。このサイトは、地域現場で必要な介護情報に簡単に辿り着けるようにして、不安解消や問題解決へナビゲーションすることを目的としている。

  • 主な4つの機能:
  1. 「知る」行政からのお知らせや各種チラシ、セミナー情報などをタイムリーに配信する。
  2. 「つなぐ」介護現場でのヒアリングで集約した日常的な疑問や質問をカテゴリー分類し、役立つ情報へ誘導する。
  3. 「学ぶ」在宅介護経験者や介護専門職の方の体験談やコラム・日誌など掲載し、介護ナレッジを共有し、疑問や悩みの解決の糸口に導く。
  4. 「見る」誰でも簡単に、初歩的な介護技術や介助技術を習得できる動画を提供する。

このサイトは、初めて在宅介護をされる方、既に在宅介護で悩んでいる方、家族や自らの介護に不安を感じている方、そして地域介護サポータとして活躍されている方に、在宅介護の基本情報や経験者の体験談や取組みへの心得を提供し、地域密着型の介護ナビゲーションサイトの実験モデルとしての役割を果たした。

 

■介護教育教材の協働制作(2013年)

金城大学社会福祉学科との協働で、初心者向けの介護動画を制作。ケアハウスで生活する高齢女性の一日を映像で収録し、介護福祉士の関わりを福祉教育教材としてまとめた。

某TV局勤務経験者や趣味の域を超えたプロ並みのカメラワークと編集技術を持つ人など知楽市会員と、金城大学社会福祉学科の先生方とのコラボレーションで完成させたものである。

プロ並みのカメラワークを発揮

■放送大学特別講義「アクティブシニアのICT活用生活」での活動紹介(2015年~4年間)

放送大学特別講義「アクティブシニアのICT活用生活」で、知楽市の活動が紹介された。2013年に内閣府共生社会特命大臣表彰を受賞した際の審査委員である関根千佳氏(同志社大学教授)が講師を務めた縁で取材が行われた。

内閣府特命担当大臣表彰(2013年)

講義の趣旨は、「退職後の60代・70代のシニアに必要とされるのは、新しいものへの好奇心と、それを実現するためのICTリテラシーである。ICTを適切に活用すれば、シニアは未知の世界を学び、新たな友人を作り、新しい生き甲斐を見つけることが可能である」というもの。

知楽市の活動は、退職後にICTを活用して社会的活動を始めた「アクティブシニア」が、これまでの経験や人脈を活かしつつ、地域社会の中で新たな居場所や役割を見つけ若年層を支援することで、シニアが必要とされる状況を創り出した事例:今後増加する団塊世代に対して新たな生き方の一つを示唆するものとして紹介された。

9月に取材スタッフの映像収録があり、翌年4月より4年間放映された。

■結び

これまでの活動を通じて、知楽市は定年後のシニア世代がその経験や知識を活かし、新たな役割を見つける場を提供してきた。地域社会に根ざした取り組みは、単なる支援活動に留まらず、参加者一人ひとりが自己実現を果たし、社会との新しい繋がりを築く大きなきっかけとなっている。これらの活動が示すように、シニア世代の可能性は無限であり、今後も地域や次世代への貢献を通じて、より豊かな共生社会の実現を目指して行きたい。

(9)ITでつなぐ社会貢献の未来~知楽市に込めた思いとこれから へ続く

 


[知楽市の履歴書](1)~ は、こちら
   ↓ ↓ ↓

知楽市の履歴書