[知楽市の履歴書](6)金沢コミュニティ情報ネット「金沢e広見」の始まりと狙い

[知楽市の履歴書]:2003年に設立した知楽市の20年を振り返ります。

金沢コミュニティ情報ネット「金沢e広見」の始まりと狙い

初代専務理事 高本 芳昭

知楽市は、創立当初「子ども、障害者、高齢者、まちづくり」をテーマに活動しようと定めた。

2年後の2006年に「まちづくり」をテーマとした活動として、金沢市からの委託事業「金沢コミュニティ情報ネットの活性化」に取り組んだ。加入団体へのアンケート調査、新着情報のメール通知、情報誌「ひろば」の発刊、サイトの定期的な更新などを行った結果、多くの加入団体から活性化の成果を感じる意見を頂いた。

これらの成果を踏まえ、今後の金沢コミュニティ情報ネットのあり方を検討した結果、現在のシステムは運用サイトの仕様や技術が陳腐化しており、さらなる活性化は難しいと結論づけた。当時、既に他のコミュニティ情報サイトは行政から市民への一方的な情報発信型から、双方向の情報交換が可能な交流の場へと移行していた。総務省が推奨する地域SNS実証実験には八代市や長岡市、千代田区など多くの自治体が参加し、ICTを活用した新しい地域コミュニティのあり方に取り組んでいたのある。

少子高齢化に伴う社会経済環境の変化に対応するため、行政と市民の協働が課題克服の鍵であると認識し、総務省が提供するオープンソース地域SNSを活用した金沢コミュニティ情報ネット「金沢e広見」を金沢市市民局市民参画課に提案した。基本コンセプトは、「市民協働で安心と安全で快適なまちづくり~市民が出来ることは市民で、地域で出来ることは地域で、そして行政で出来ることは行政で」とした。

金沢市では、藩政時代から伝えられた「広見」の復活や、町会離れが進む若い世代を町会に加入させる取り組みを進めていた。これらの取り組みにICTを活用し、21世紀のICTを活用したユビキタス社会にふさわしい地域コミュニティの形成を目指した。

■金沢コミュニティ情報ネット「金沢e広見」の目指したもの

  • 生きた情報で安心・安全・快適な生活を実現

自己責任で情報を発信したり活用したりするユビキタス社会においては、地域の情報は地域で創り活用することで、いつでも、どこでも、誰もが瞬時に情報を手にできる環境を整備することが必要である。また、災害や犯罪発生時には、身近な危険情報の発信によって、市民同士が互いの安全を守る風土を作ることを目指した。

  • 市民参加で協働社会の実現

行政からの一方的な情報発信だけでなく、市民の自律的な情報発信を促進し、互いの情報交換による新しい市民サービスの形態を追求した。市民と市民、市民と行政、市民と地域が双方向の情報交換を行い、自律的な協働社会を実現することを目指した。

  • 知恵の共有で創造性豊かな市民生活を実現

メディアの氾濫によって忘れられている、人と人が「教えられたり、教えたり」する風土を復活させ、どこにでもある生活や子育て、伝統文化に関する知恵を共有して、創造性豊かな市民生活を実現することを目指した。

  • シニア人材の活用

地域SNSシステムの企画運営に、定年を迎えるシニア人材を活用し、知識や豊富な経験を生かしたハートフルなサポート体制を構築する。さらに、シニアの社会貢献や生きがい創りを支援することを目指した。

■「金沢e広見」のシステム構築と普及活動

2007年、「金沢e広見」のシステム構築を知楽市が担当し、総務省のオープンソースを活用して開発した。サポートはLASDEC(地方公共団体情報システム機構)に依頼し、ハードウェアは金沢市の保有装置を使用、ハウジングはIT企業のS社に委託した。

2008年1月1日、金沢コミュニティ情報ネット「金沢e広見」は一般公開を開始した。普及活動として、情報通信月間行事2008 & e-messe kanazawa 2008と協働で「金沢e広見」の説明会と体験会を実施し、各種団体への説明キャラバンやオフ会の開催なども行った。また、サイトの公共性を確保し、市民参画課とケーネット知楽市の協働運営をスムーズに進めるために、定期的に運営協議会を開催した。

連合町会会合での説明会

運営協議会

一般公開から1年が経過した2009年3月末時点で、会員数は290名、コミュニティ数は64と順調なスタートを切った。しかし、運用中にはトラブル時の対応やサポートの有償化、さらなる活性化のための課題に直面。2011年3月末日、会員数約450名、コミュニティ数約70をもって運営を終了した。

■成果と意義

「金沢e広見」は、地域コミュニティの活性化を目指し、市民と行政が協働してICTを活用した新しい情報交換の場を提供した。運営期間中、多くの市民が参加し、情報発信や共有を通じて地域の課題解決に貢献した。この取り組みは、少子高齢化が進む社会において、市民同士のつながりや協働の重要性を再認識させるものであり、次世代のコミュニティづくりに向けた貴重なモデルケースとなった。

金沢コミュニティ情報ネット「金沢e広見」が提供した経験や教訓は、今後の地域活性化やICTを活用したコミュニティ形成において、大きな意義を持つものと考えている。

(7)子ども安心・安全プロジェクトのはじまり へ続く

 


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